「Vanaja」2006年 テルグ
邦題:ワナジャ
監督:ラジネーシュ・ドゥーマルパリ
出演:ママータ・ブーキヤ
IMDb:https://www.imdb.com/title/tt0832971/
Wiki:https://en.wikipedia.org/wiki/Vanaja_(film)
あらすじ
アーンドラプラデーシュの片田舎、ワナジャは漁師の父と2人暮らし。村の祭りで古典舞踊クチプディを観たワナジャは、占い師に「偉大なダンサーになる」と予言される。困窮する生活のためにワナジャは15歳で女領主の家に奉公に出ることになった。女領主ラーマデヴィはクチプディの踊り手で、ワナジャは必死に頼んで踊りを習うことを許可してもらう。女領主はワナジャを気に入り、踊りの腕はどんどん上がっていくのだった。
あるときラーマデヴィの息子シェカールがアメリカから帰国する。シェカールに興味深々のワナジャ。しかしある日ワナジャはシェカールのお金の計算の間違いをラーマデヴィの前で指摘してしまい、彼に恥をかかせてしまう。いらだったシェカールはワナジャを徐々に追い詰めるのだった。
感 想
2007年ベルリン国際映画祭で最優秀賞を含む24の国際賞を受賞した作品。この映画は商業作品ではなく、監督がコロンビア大学で論文として発表した物語が元で、映画プロデューサーである母親から借りたわずか2000ドルで製作が始まったそうで、出演者は全て素人。少女ワナジャを演じた子もまったくの素人で、1年もレッスンに通ったそうです。
この映画、私はたまたまAmazonPrimeで見かけて観たのですが、たくさんの言語で字幕をつけたものを監督が公式ツベで公開しています。下記にリンクありますのでぜひ観てみて欲しい。
しかしこの子が凄い。よく見つけたよね。習って1年とは思えない。物語が進むにつれて、ワナジャの踊りがどんどん成熟していくのだけど、それが女性としての目覚め、喜び、そして苦悩と、ワナジャの心の移り変わりとリンクされていて、素晴らしかった。
初めて人前で踊ったときは可憐で愛らしく、少女そのもの。しかし最後に踊られる「Aigiri Nandini」という曲は、マヒシャスラという悪魔を倒すために生まれた怒れる女神ドゥルガーの誕生を描いたもので、まだ幼さの残るワナジャが自身の苦しみと悲しみを込めた、気迫の滲む踊りをみせます。私はクチプディの知識がないので彼女の腕の程度はわかりません。しかし観ていて涙が止まりませんでした…。
ワナジャは決して大人しく無垢なわけではなく、本当に普通の女の子。知恵も使うし策略も練る、性に興味深々だし、口ごたえもする。しかしいかんせんこの幼い少女が無事に生き抜けるほどこの世界は甘くないのだ、そう思わされます。
非常に淡々と描かれる物語が、逆に「貧しさ」「身分」という条件によってもたらされる、ぬぐいようのない悲しさや悲劇をじわじわと感じさせます。彼女が苦しみの代わりに手に入れた舞踊の表現力、その成果が予言どおりだったのかはわかりません。決して後味が良い映画ではないけど。しかし、素晴らしい映画でした。
トレーラー
視聴場所
■AmazonPrime:テルグ版(日本語字幕)
■監督公式Youtubeアカウント:テルグ版(日本語字幕)